2019年12月2日月曜日

行けない時ほど、空想する ~罠~

 年内は狩猟に行けないお肉屋さん猟師のエア出猟


 行けない時ほど頭の中で空想。来年のデビューに向けて自分が扱う罠について考えています。僕は罠デビューは ”箱罠” で行おうと考えています。

 一口に罠と言っても様々な種類や方法があります。くくり罠、箱罠、囲い罠。どれも一長一短がある感じがします。目的を明らかにして、自分が目指す狩猟スタイルに合った方法を取り入れたいところです。

 なぜ箱罠を選んだのか?

 それは自分が目指すスタイルと適合しているからです。まず箱罠は、設置に車で持ち運ぶ必要がある場合が多いので、見回りなどの負担が減ります。罠を仕掛けれる場所は幸運にも、知り合いの牧場の方が所有している牧場を含む山全体でOK頂いているので、車で入れてまた捕獲も気兼ねなく行う事が出来ます。人間関係超重要。

 その牧場を含む山全体が猟区(一部銃不可、罠のみ)なのでこれまたラッキー。しかも職場から車で10分という好条件♥素人ハンターデビューにはうってつけの条件かも♪そして牛のエサをもぐもぐ食っているらしいので、おそらく脂はノリノリ。なぜ今まで害虫駆除依頼していないのか不思議だったんですが、来る猟師さんとうまが合わなかったそうです。よかった、縄張りになっていなくて。

 師匠にも「初年度からあの場所は羨ましいなー!かなりいいサイズおるぞ、あそこは。足跡ばっちり確認してきた。」とお墨付きを頂き僕もまだ一頭も獲れていないうちから大満足。ん?

 (笑)早速確認してたのか!さすが師匠。設置などもアドバイス頂ける算段で、年が明けるのが楽しみで仕方ありません!

 さて、そんな場所に仕掛ける箱罠をネットで物色。おおお

た、高い。しっかりしてそうな製品は優に10諭吉を越しています。一基につき10諭吉は 痛い。凄く。痛い。まあ、もともととりあえず一基で様子を見るつもりだったので、兼業お肉屋さん猟師としては致し方ない出費か。

 そんな中 -更に物色していると6諭吉のまとも(そうな)製品を発見!!それが

ファーレ旭式箱罠


です。なかなかしっかりとした作りの様で、捕獲実績もしっかりある模様。これはかなりコスパに優れた製品かもとお気に入りに登録。

 なになに、堅牢なつくりは全溶接しているから、とか。素材の太さなども強度十分、これはもしかすると買いかもしれませんね。ネットの検索でも



               コスパ抜群の箱罠!!



って出てますしね。それにしても装備品を購入したり、探していて思いますが、狩猟用の装備品などって

  異常に高い本格仕様か

 異常にに安い入門仕様

 のどちらかに振りきっているように感じます。前者はプロ猟師(猟師の時点でプロですかね (;^_^A )に、後者はサバゲ―及び登山などの入門者に、という感じがします。これはイニシャルコストを取るか、ランニングコストをとるかの選択です。諸先輩方の意見はまたこれ真っ二つに分かれていますが、ブログなどで情報発信をしっかりとされている方は、イニシャルコストを掛けなさい、安物買いの銭失いと仰っている意見が多いように感じます。

 現実的にお会いする方は、圧倒的に安物でよい!という意見ですね。ただ師匠は逆で、お金かかるよ、掛けなさい、でも無理はせずに、という意見です。僕もこれに賛同しています。せっかくの狩猟を、自分の気に入った製品に身を包んで行いたいですしね!ある意味命を預ける訳ですから。

 と、意見はいっぱしに申し上げております。が、空想、エアー狩猟です。安いも高いもない状態なのです。

 箱罠選びが楽しみなお肉屋さん猟師でした。






























2019年12月1日日曜日

ああ、もどかしい。

繁忙期のもどかしさと本職の重要さ


 私はお肉屋さんの職人です。お肉屋さんは12月、年末年始が一番忙しいです。この繁忙期は一年の総決算と申しますか、この期間の良しあしは今まで一年間行ってきた事のお客様から頂く評価と思っています。

 昨年度より売り上げが低ければ、私の働いているお肉屋さんよりも良いお肉屋さんにお客様が流れていると言えます。おかげさまで今年は好調に売り上げが推移しており、責任者としては胸をなでおろしているところであります。

 仕入れ業務と、人財管理が主な業務なので、繁忙期はその仕事に忙殺されます。そして大量に販売される牛肉や豚肉が在庫として自社の冷蔵庫には入り切れず、近所にある外部委託冷蔵庫に数十トンのお肉の山が出来ていて、その管理も併せて発生します。

 今ではこれらの業務にも基幹システムが導入されて、かなり負担は軽減されましたが、大昔はは紙ベース(笑)、数年前まではエクセルで管理していたので

こんな仕事は朝飯前

と言わんばかりに朝飯前に仕事が終わる連続でした。冬の日の出は朝7時!!

 今ではかなり楽にはなっていますが、片手間で出来るほど生ぬるくはありません。以前は迫りくる数々のプレッシャーに胃がキリキリとする日々でしたが、今では胆力も鍛えられて、どっしりと構えることが出来るようになりました。

 私の働いているお肉屋さんは、地域でも有数のお肉屋さんです。この会社のおかげで様々な資格やスキルが身につき、そして狩猟にも関わることが出来るようになったと思っています。狩猟は行うと必ずお肉が産出されます。頂いた命を有効に活用できる力を身につける事が、日々の業務で培われている訳です。

 まず屠畜についてですが、一般の生活を行う中ではまず必要に迫られることは無いと思います。家畜は必ず屠畜場で処理しなければ食肉として流通出来ないために、この屠畜場で勤務しなければ屠畜に触れたり行ったりすることは無いでしょう。

 屠畜に含まれますが、皮はぎについても同様です。かなりのテクニックが必要となりますし、夏場の脂の少ない個体も、冬場の脂の乗った個体もそれぞれにテクニックが必要となります。美しく皮を剥ぐ事は、せっかく頂いた命を無駄にしない大切な事です。

 お肉の産出量は先ずこの皮を剥ぐ時点で左右されます。脂や肉を皮につけて削いでしまえば、優に数%は変わってきます。これは家畜にも言える事です。ただ猟師さんが行うように、刃物で皮を剥ぐ、という行為が現在の家畜の主流の方法ではありません。

 グラインダーでブイーンと剥いてしまうのが現在主流の方法なので、私は今でも刃物で皮を剥いでいる屠畜場に練習に行きました。

 次に皮を剥いだ屠体を保管する技術ですが、家庭用や一般の猟師さんではなかなか無いプレハブ冷蔵庫があるので、熟成しながら保管する事が出来ます。熟成の方法、方向性や仕上がりは明らかに家畜とは違いますが、やはりお肉は熟成により、より良い品質へと導く事が出来ます。

 生きていた時の環境や、屠畜の条件や方法でかなり肉質は左右されますが、これはジビエ肉の特徴とも捉えることが出来るでしょう。最高の肉質や品質を求めるなら、イノシシを飼養しなければならず、それはその飼養を行い続けていれば限りなく豚に近づいていく事になります。

 罠などで捕獲したイノシシを飼養している方はどうもちらほらいらっしゃるようですが、これは一代限りの飼養で、またイノシシは環境適応能力が高いようなので、野生の時とは異なった振る舞いを取るそうです。だから家畜になった訳なのですが。ただ血統選別を行いだすと、それはもう豚ですし、この行為を行った場合の食肉としての流通や適応する法律はあるのでしょうか?ある意味イノシシから現在に通用する血統選別を行う人は、もはやプロ過ぎて憧れてしまうかもしれません。


 次に骨付きのお肉から骨を取り除く作業、捌きについてですが、これは私の超、超専門です。この捌きでも大きくお肉の品質は変わってきます。何度もイノシシの産肉量を調べましたが、野生環境で生活している分、骨が太く豚に比べて10%ほど骨や皮の量が多いです。因みに豚はおおよそ70%の産肉量です。


 と、猟師にとって獲物が取れてから必要とされているスキルは人並み以上にありますが、
が!

 
 忙しくて取りに行けない、狩猟にいけないもどかしさ。ああ、年内は多分射撃の練習にもいけないんだろうなぁ・・・猟師の一番大事なスキルは獲物を捕獲する能力です。今のところそのスキルはー

                 0

 デビューは来年になりそうなお肉屋さん猟師でした。
































2019年11月6日水曜日

やっとやってきた!

待ちに待った2年間。



ついに手元に着ました。


ミロク製作所 MSS-20 新品!


スペック(同社HPより抜粋)


 銃砲店さんの話では今の新品は第3世代にあたる製品だそうです。




 待ちに待ったこの瞬間。先日ようやく所持許可が下りて、銃を手にすることが出来ました。猟師になりたいと思い立ってから早2年。手元に届くと長いような、短かったような不思議な感覚です。

 今期は兵庫県警がかなりご多忙だったようで、所持許可が例年より時間が掛かってしまったようです。いつもなら狩猟免許の習得後1か月ほどで許可が下りるようですが、今年は10月の末にずれ込むことに。

 第一種銃猟も初年度より登録して、取り組む予定でしたが兵庫県猟友会が猟期前にまとめて申し込む狩猟者登録に間に合わず、今年は罠猟のみの登録となりました。捕れる、捕れないは別にして「銃猟を行うぞ!!」と意気込んでいただけにいささか残念ですが、気持ちを切り替えて

 まずは罠猟をしっかり取り組みたいと思います。

 届いた銃は毎日ホホ付けの練習を行っています。そこでいくつかこのMSS-20という銃についてわかったことがありました。

 まず長い。やたら長い。そしてフロントヘビー。腕力にはかなり自信がありますが、毎日練習を行っていると左肩に筋肉痛が・・・(-_-;)長いバレルは取り回しに部屋の中でも気を使います。さて、これが実際の猟場に持ち込むと更に邪魔に感じることだろうなと今から不安。

 まだ光学機器を載せていない状態ですが、新品を購入したのでまだまだ扱いも丁寧に扱っています。藪の中とか掻く時にその内乱暴に扱いそうです。道具は大切に扱わなきゃ。

 次に空撃ちゲージの相性がある事が判明。装弾の長さでボルトの閉鎖に癖が出ます。2 3/4装弾では問題なく回転するのですが、それより少しでも短い装弾ではボルトが閉鎖しなかったり、排莢に難ありと猟師の諸先輩方がネットなどに書き込んでいる通り、装弾にも相性がある事が解りました。当たる、当たらない以前に操作に不安があるようでは駄目ですね。

 マガジンからの装填も同じでした。MSS-20は薬室1発、マガジンに1発の計2発装填出来るのですが、空撃ちゲージを1発ずつ種類を変えると、ボルトを閉鎖する途中で詰まります。何とかボルトを起こしなおして排莢しても次弾の装填も問題があります。

 例え練習用の空撃ちゲージでも、やはり相性を考えなくてはいけないんだと判った次第でした。せっかく手にすることが出来た銃を練習でダメにしては元も子もありませんね。

 操作の癖と言えば、ボルト閉鎖時にトリガーを絞って閉鎖すると撃鉄が起きない、つまり発射されない状態になるという事が判りました。一旦この状態になると再びボルトを操作(起こして閉鎖し直す)すると発射可能な撃鉄が起きている状態になりました。

 この操作方法は、調べてみると猟師がよく行っているようで、猟場でこの操作をおこなっておき、獲物を見つけると素早くボルト操作を行い、発射するです。ただ装填した状態で歩き回るのも僕は不安ですし、何より所持許可が下りた時に担当の刑事さんから


「儂が常に隣に居ると思って銃を扱えよ!」

「儂はお前を信用して許可を出したんや。男の約束やな。」

「破ったら即取り消し。二束三文で銃砲店行き確定やぞ!」


 と身の毛もよだつお言葉を頂戴したので、しっかりと法令順守。安全第一安全狩猟に努めて参る所存です!!2年もかけて手に入れて、一瞬の気のゆるみで失うのはご免ですからね。そして先ほどの操作方法だと、はっきりは判りませんが強い衝撃が加わると暴発するかもしれませんし。恐ろしやー。因みに当たり前かもしれませんが、MSS-20はボルト閉鎖時にトリガーを絞って閉鎖すると、セーフティーはかかりません。

 一口に ”銃” と言っても様々な違いがあるんだなと実際に手にしてみて判りました。



 さて、せっかく手元にある銃。初年度は狩猟には使用できないので射撃に精を出そうと考えています。師匠情報だと11月15日以降は射撃場は暇になるそうです。最初?と少しだけなりましたが、そりゃそうだと納得。猟期に入ればみんな山に向かいますもんね・・・素人にはうってつけの状態だという事です。

 ようやく手に入れたMSS-20を打ちまくっている(勿論法令順守で!!)ことをイメージしながら調子に乗って写真を一枚。







 

 一人暮らしの汚い家の中については触れずにお願いします!!






























2019年10月10日木曜日

ジビエの産業化

ぶっちゃけジビエはお金に変えれるの?

 現役お肉屋さんの職人の感想


 

 ジビエに取り組み始めて数か月の私が、今の時点での産業化について今日は書いてみたいと思います。

 ぶっちゃけ、と一番最初に書きましたがさてどうなることでしょうか?


 まずジビエを産業化する(つまりお金にする)には販売しなければいけません。その販売は勿論法令順守したうえでの販売です。

 ジビエを製品化する方法は大きく分けて以下の2つです。



①お惣菜、飲食物にする

 ①を実現するにあたり必要な許認可は


⑴ 惣菜製造業
⑵  飲食店営業


のいずれかを許可してもらわなければいけません。つまり惣菜として加工して販売するか、飲食店で調理して販売するか、という方法です。



 次の

②精肉化する

 これは少々ハードルが高い方法です。これを実現するには

 食肉処理業

なる許認可を頂戴しなければなりません。これには高額な設備投資が必要になります。食肉に供するための施設を作らなければ、この許可は下りない為、例えば猟師が個人で、なんてことは超絶お金持ちの道楽趣味でなければ出来ないでしょう。

 処理施設を運営する能力も必要になりますし、副産物の処理も行わなければなりません。副産物とは 皮 内蔵 骨 牙 などのお肉以外の部分です。

 家畜だとこれらの副産物は産業として成り立っていますが、ジビエで副産物を含めて安定的産業に育てている事例はほとんど見かけません。

 食料自給率の向上や、鳥獣被害対策などで産出するジビエ肉を有効活用しようという動きは国が見せています。しかしながら現状ではなかなか難しいようです。

 つまり精肉流通はかなり難しいことになります。ぶっちゃげますと冒頭で書きましたが、ぶっちゃげ


 お金に変えることは難しい



と感じています。食肉化する施設は国や県の助成で建設する事は出来ますが、その後の運用が立ち行かなくなる場合が多いようです。つまりペイ出来ない、という事ですね。


 このまま精肉化する事に焦点を当てて、話を進めて行きます。

 【処理施設をペイする事を考える】

 例えば処理施設を建設する費用が2000万円かかったとして、それを20年で償却すると考えると、一年あたり100万円の返済です。(金利は考えないとして)イノシシ1頭を仮に5万円の価値と仮定して(そんなにない場合も多々ありだが)この5万円が仕入れ原価、販売粗利益率20%(手数料・諸経費や実際の家畜屠場の状態から勘案)、従業員1人で運営して年間100頭の搬入が必要です。それを20年続けなければいけません。
 猟期だけの稼働で一日必ず(11月15日~翌年3月15日まで、120日)0.83頭の搬入を行わなければいけません。この搬入されたジビエは必ず毎日現金化されないとキャッシュアウトして施設は破産。設備の更新や人件費の支払い、維持管理が出来なくなります。

 単純な計算で非現実的な捕らぬ狸の皮算用ですが、こんな感じになります。実際は建設場所にもよりますが、排水処理設備などはもっと大掛かりな設備投資金額となるでしょう。



 原因はさまざまだと思いますが、施設の安定活用が難しい事が大きな理由に感じます。ジビエはその性格上、安定的に産出する事は困難である事がこの大きな要因だと思います。それ以外にもまた流通も脆弱です。副産物の活用も進んでおらず、ジビエを食する諸外国のような文化も育っていません。

 つまりまだまだお肉として広げるための基盤が育っていない、という結論に至ります。

 ですが、逆説的に考えてみるとまだまだ青野原、ブルーオーシャンのような気がします。


 可能性は十分ある


 僕はこのように見ています。それは前出で書いたとおりまだまだ発展途上の分野だと思うからです。消費者の理解を得て、産出される全ての部分がうまく回りだせばお金に変える事は可能だと思います。


 例えば施設の安定運用は、今まではジビエ流通の慣習だけで行っていたから安定しなかったのではないか、と考える事も出来ます。狭いマーケットだけで行っていたから安定させる事が出来なかったと言えるかもしれません。

 施設を年間通して活用する方法を考えみる、例えば猟期以外は食育施設として一般の方に広く開放する事で、理解も深まります。勿論夏場の鳥獣被害対策の処理も行います。これらの活動を知ってもらうには動画(youtube配信)は優れた広告となるでしょう。

 理解が深まれば消費も今以上に生まれて、夢のような話ですが、スーパーマーケットに陳列されているなんて事が出来るかもしれません。


 まあ夢物語ですが、何がジビエ流通を妨げているのでしょうか。

 様々な原因があると思いますが、内部、関係者に関わる事にも一因があるように感じます。

 それは僕自身少しずつジビエに関わってきて、一番感じた事


 業界の閉鎖的雰囲気


です。何か後ろめたい感じがする、なんとも言えない雰囲気。この日本で、銃を持っている、しかも使用する。命を奪う行為を自ら選択して行う、皮を剥ぐ、内臓を取り出す。
 
 人が避ける ”禁忌” にもとられる行為を行っている事が、その原因でしょうか?しかし、しかし誰かがその行為を行わなければ、例えば誰かが家畜を殺さなければ食べる事は出来ません。 (日本語は複雑で、この行為の事を屠畜と呼びます。)

 
 必ず必要とされる事です。もし、必要が無いのであれば僕の様なお肉屋さんの職人は存在しません。ただし、家畜と野生の違いはありますが、同じ一つの命を頂く事に違いはないと僕は考えます。

 社会から必要とされている事を行っている訳ですから、もっと広く情報発信を行うべきだと感じました。閉鎖的になるのでは無く、自分達が行っている事に責任を持てるのならば、自信を持って発信するべきだと思います。

 人は触れた事が無いことや、知らない事は避けるように出来ています。ジビエが今より少しでも身近になれば、そうなるように業界として努力し続ければ


ジビエの産業化


は可能だと思う今日この頃でした。

結論!

ジビエはお金に変える事が出来る!かも















































2019年9月23日月曜日

ついに今期より狩猟デビュー

罠猟師として今季より頑張ります!


初年度

 夏の有害駆除の多忙な時期も終わり、イノシシの屠畜も一息ついた今日この頃。

 師匠に、「今期は狩猟者登録せずに、射撃の練習をみっちりやる事!!」

 とお達しを受けていたのですが・・・


 せっかく狩猟免許を習得したのだから、やってみたい!
 例え一匹も取れなくても。



 申請中の銃の所持許可もそろそろおりる頃ですし、せっかくの機会、少しでも実戦経験を積まなければと狩猟者登録を行う事に。登録にあたり、地元猟友会にも入会する事にしました。

 猟友会の入会も、来年度以降で良いよと師匠は仰っていたのですが、試験当日の約束もあり、猟友会にも入会する事に。

 ただし、条件として

 やはり銃を使って狩猟するには一年射撃の練習をみっちりつめ!儂が教えるから

 と第一種(つまり銃を使った狩猟)の登録は来年度に。

 グヌヌ "(-""-)"



 初年度から華麗にデビューしようと考えていたのに・・・



 と、気を落とさずに。師匠が銃は来年!と言ったのも理由があります。僕は今年新たな資格、 ”ミートマイスター” を受験します。その習得のためにかなりの時間を費やさなければいけないので、仮に狩猟者登録をしたところで出猟できない、なーんて事が予想されるからです。


 銃を扱う時に、一番大切な事は 


 
 心の余裕


 と師匠は仰っていました。普段ならやらない事も、焦って成果を求めるがあまり起こしてしまう、普段なら確認するのに確認を怠ってしまう・・・などなど狩猟における銃の事故や違反は心の余裕が無い時に起きる事が多いと教えてくれました。



 罠猟に決めたいきさつ





 以前までの僕の予定としては、毎週の休みの日は午前中は試験対策、午後から銃を持って山に入ろうと考えていました。そんな僕の話を聞いて、

 僕は超絶せっかちな性格なので、時間が無い中で狩猟に行くと、必ず焦って良くない結果が起こる。ならば来年以降しっかりと計画して行う。そのための練習を師匠がつけてくれる、という流れです。

 まあこの話にも一旦納得したのですが、やっぱりどうしても狩猟者登録したい!というと「じゃあ罠猟をしたら?」と勧められたので今期は罠猟で挑むことにしたのです。


 罠を仕掛けたら毎日見回りしなければいけませんが、自分が出来る範囲で仕掛ければ負担も少なくて済みます。師匠が僕の勤める会社のすぐそばに、良いポイントがあるのでそこを譲ってくれることになりました。


 それに僕の仕事ならではの場所も見つかりました!その場所とは


 牧場



 です。仕事柄牧場さんとお付き合いがあります。牧場には牛のエサが豊富にありますが、そのエサを狙ってイノシシが出没しまくっているという情報を以前に仕入れていた僕は、その話を師匠にすると、
 

 「それは最高やな!牛のエサをたっぷりと食べてるイノシシは飼育されているみたいなもんや。警戒心も今は低いやろうし、初心者にはもってこいの場所やな。」


 と大絶賛。牧場主さんは非常に困っていますが、猟師には最高の場所ですね。会社付近には牧場が6軒ほどあるので、場所選びに逆に困ります・・・( *´艸`)ただ牧場内でのとどめ差しは注意が必要ですね。

 罠を設置する牧場は、少し前に社長から直接頼まれた牧場さんにします。但馬牛を400頭ほど肥育されている牧場さんです。


 狩猟に興味を持ち始めて早2年。ついに自分が猟師としてデビューするに至りました。



 楽しみです!!



 写真は今揃えている最中の装備品を身にまとってみたところです。








 上半身を撮影しました。背負っているバッグは

マックスペディションゴディアックギアスリンガー(オリーブドラブ)

 
 直ぐに使う装備品を運搬するために、

ダイレクトアクションタイフーンチェストリグ(マルチカム)


 帽子は

5.11タクティカルブーニーハット(GEO7)


 手袋は


ワークマンプラス・フィールドコア春夏用ハイカーズグローブ(Lサイズ・リアルツリー)


 上着は


タガミサイレントハンタースーツジャケット(3L・テンリアル)


 見えていませんが、シャツは

ワークマンプラス・フィールドコア肌がさらさらZERO DRY半袖(XLサイズ・カーキ)


 をチョイス。


 下半身は・・・ただのズボン!!(笑)写っていないので手抜です。因みに買おうと思っているのは

ワークマンプラス、フィールドコア2019年版
秋冬用クライミングパンツのハンティングカラーと
コーデュラユーロウォームパンツのタイガーストライプ
更にストレッチマイクロウォームパンツのダークグリーン

以上3点からその日の状況に合わせてセレクトしようと考えています。タガミのシリーズで揃えようと考えてもいましたが、お値段が( ^ω^)・・・

 ただでさえ激しい出費に激しいダメージを受けているので、そろそろ緊縮財政しなければ。物欲を抑える薬が欲しい今日この頃です

 それにこの衣服だけでは冬山は厳しいので、下着類などもそろえなければいけません。下着をケチるとんでもない目に合う事は明白なので、モンベルで揃える予定です。


 さあ、ついにデビューです!!

2019年9月15日日曜日

あのジャンボイノシシは美味しかったのか

美味探求


ああ、ほっぺたが落ちてしまうー

 先日お伝えしたジャンボイノシシは捕獲後8日間の枝肉熟成を経て無事捌かれて食肉化。夏場なのに脂の乗りまくった個体のお味は如何だったのかをレポート!!!!!




 捕獲師匠曰

「之超旨士。之黒毛和牛二勝旨士。最高旨士。究極美味、最最高、最最最高ーーー!」

「超絶体験間違無。之味口入、悶絶超絶怒涛美味。異次元体験脳内麻薬怒涛抽出!!」

「宇宙的旨士。悪魔的旨士。再味無理無理。夏場最高、究極怒涛宇宙戦艦大和ー!!」




と捕獲した師匠が 

このイノシシは最高。牛肉より旨いでー

と散々おふれこんでいたので、僕達の期待は最高潮。会社のみんなで試食会を行う事となりついに迎えた前日、ええ。驚異のうまさ、脳内トリップを体験しますとも!


 捌いたお肉は総重量で70kg。大量大量。師匠と一番弟子、僕の3分割に分け合います。




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 みんなで行う試食会を前に、どうしても味見したい気持ちを抑えきれないあるお肉屋さん猟師、ここは仮にA氏としておきましょう。A氏は仕事終わりにこっそりとモモ肉の一部を削ぎ、フライパンを温めていた。


 これはみんなに提供する前の味見だ、抜け駆けでは無い!最高の製品を提供するための学術的な試験なのだーーーーーーーーーー!

 恐ろしいほどの言い訳を並べて入念に脂を引いたフライパンを見つめるA氏。薄く立ち上る煙は期待の表れか、それとも・・・




 今だ!!





 最高のタイミングでフライパンに削ぎ取ったモモ肉を投入するA氏。すると・・・









( ,,`・ω・´)ンンン?ンンん












 まさか!

















くっせー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



 普段嗅ぐことの無い強烈なアンモニア臭に襲われるA氏。


 これはいったいどういう事でしょうか。抜け駆けの代償はあまりにも大きすぎたA氏。

 プロの肉職人であるA氏にその原因を聞いてみました。


〈解説〉


 師匠のおふれこみですっかり忘れていましたが、このイノシシは雄。しかも6~7年以上生きている個体。この臭さの原因は雄独特の臓器からくる匂いなのです。雄独特の臓器とは・・・そうです、睾丸です。モモ肉の付け根にある睾丸は強烈なアンモニア様の匂いの元になる生産地。牛肉でも種雄牛と呼ばれる類の雄牛は、その役割を終えると食肉処理されますが、独特の、本当に独特の強烈な匂いを放つ食肉となります。また筋肉がホルモンの影響などで、およそ普段消費者の方が口にしないレベルのパサパサの口触り。価格のつかない、ミンチするにもためらうほどの、超絶低品質な牛肉となるのですが。
 このことをすっかり忘れていましたが、同じことが言えると思います。



 強烈な臭さと格闘しながら焼き終えたA氏。味は・・・もしかしたら、もしかすると、いや、きっと!味は良いに違いない・・・!



 恐る恐る口に運ぶ私・・・おっとと、A氏。






( ,,`・ω・´)ンンン?
( ,,`・ω・´)ンンン?
( ,,`・ω・´)ンンン?









おえっ


むり・・・


 やっぱり。不味い。 ”ぼう” と一緒やん・・・
”ぼう”とは先ほどの解説にある種雄牛の事です(業界用語)。もう筋肉が絶望的な不味さ。では、脂身はどうなのか。脂身を削ぎ取り同じように焼いてみます。





 うーん。いまいち。旨さはあるが、旨さはあるが癖が強い。筋肉に比べると随分とましだが、えもしれぬ癖がある。


 睾丸の近く、モモ肉だったからこの臭さだったのではと、翌日肩ロース肉を試食会に使う事に。昨夜の事変は口外無用です。



 あの臭さに対抗するためにA氏特製調合味噌を準備。臭みを抜きまくる準備は万全です。

 2時間漬け込んで、ソテー







( ,,`・ω・´)ンンン?
( ,,`・ω・´)ンンン?
( ,,`・ω・´)ンンン?

 焼いている時の不快感はありません!おお!味噌の焼ける香ばしい香りが食欲をソソリマス。これはもしかすると?

 焼き終えた肩ロース肉をそっと口に運ぶA氏。
 えも知れぬ美味。極上の時間。やっぱり師匠は本当の事を言っていたんだなー































おえっ



むり・・・




 味噌の香ばしい味がF1カー並みの速さで終わるや否や、強烈な刺激がA氏の舌を襲います。







アッカーン!


 そっと口に入れた1万倍のスピードで飲み込んだ私。うん。これは無理。



 後日、師匠に聞くと


「夏場で最高級の味やったな!」

と笑顔で申しておりました。師匠は鋼鉄の舌をお持ちでした。

ごめんなさい。師匠。


 後日、コテコテに味付けしたお肉をみんなで噛みしめて頂きました。





食肉の品質

お肉の品質を見極める極意


客観的な美味しさの基準


 美味しいお肉下さい!

 なーんて良く言われますが、美味しさは個人で差異があり、全ての人があまねく「美味しい!」と評価するお肉はありません(多分)。個人の好みが反映された美味しさは客観的な評価では無く、それは主観的な評価です。

 お客さんに求められる「美味しいお肉下さい!」は、回りくどい言い方にはなりますが、

 お客様( *´艸`) 私が主観的に美味しいと感じるお肉をくれー

という事になります。これはそのお客様に合わせたチョイスを僕達が出来るか腕の見せ所であります。お話しを伺い、しっかりとコミュニケーションを図ることで、誰が、何を何時、どのように欲しているのかを推察し、商品を組み立てていく女将さん的な感じです。


 この評価とは別に、僕達がお肉のプロとして行う評価は客観的評価を行います。普遍的に定数的、かつ定量的に評価します。この評価を連続して行っていき情報を蓄積してデータベース化、そのデータベースを基に、多くの方が美味しいと評価するだろうお肉を推察しながらお肉の仕入に活かしています。

 それらの情報は、比較しやすい条件を取りまとめて、その会社が是とする仕入れの基準になります。例えば

 当店の牛肉は全て黒毛和牛です

とお客様に訴求している会社は、黒毛和牛を販売する事を会社の是、顧客の支持を得るために行っているという事になります。(偽装は例外)まあ黒毛和牛を訴求するだけでは要素が弱いですが、これはものの例えです。

 和牛と呼ばれる品種は4つ

黒毛和牛
②褐毛和牛
③短角和牛
④無角和牛 の4種類。

 因みに国内の和牛総生産量の内、黒毛和牛の占める割合はおおよそ98%以上。な、ななんとほとんど黒毛和牛なんですね。じゃあ褐毛和牛などは希少でプレミアム、美味しさは半端ないって感じ・・・




 には




ならないのです、黒毛和牛が一番美味しいと感じる方が多いです。ですから黒毛和牛が一番生産量が多いのです。褐毛和牛や短角和牛は主に赤身で筋肉質、牛の体型も違います。無角和牛に至っては数百頭いるかいないかの天然記念物もので、現物は僕も見た事はありませんが、更に赤身だそうです。


 赤身の部分は筋肉です。黒毛和牛はこの筋肉の間に ”さし” と呼ばれる筋間脂肪が多く入りやすい品種です。さしの入っていっる場所は毛細血管です。細かい血管を通じてサシを形成するのが黒毛和牛の特徴です。

 黒毛和牛は幾世代にも渡り血統選別が行われています。血統は遺伝情報の選別でもあります。特にサシに関しては父型の遺伝情報、つまり血統による要因が7割以上と言われており、この血統を選別することにより、美しいサシの入る黒毛和牛を産出する事が出来ます。

 父型の遺伝情報とは精子です。優れた遺伝情報を持つ精子は種雄牛(しゅゆうぎゅう)として選別されて、各県が選抜。これぞという種雄牛をアピールしています。

 ところがここ最近の赤身ブームなどで、サシ一辺倒の評価は消費者の支持を今までのように得られなくなってきています。牛肉の流通時における全国統一の評価基準は

 サシの入り具合 歩留(産肉量) 

を長年主たる基準として評価してきました。ところがこの評価だけでは本当に美味しい、大勢の方が評価するであろう牛肉を選ぶことが困難になってきています。また消費者の好みが細分化されている事も相まって、近年この評価を見直そうという動きもあります。

 美しいサシの入った牛肉は見た目が良く、沢山サシが入ると肉の色が薄くなる傾向があり、鮮やかなサシでピンク色に近い牛肉は、美味しそうに見えます。ところが見た目が美しいお肉=美味しいお肉(あくまで主観的)という方程式は成り立たないのです。

 僕は長年主観的に美味しいお肉を求めて仕入れを行ってきました。枝肉を仕入しては味見を行い、評価を付けて情報を蓄積してきました。評価は官能評価ですが見た目から食味まで20個の項目を10段階で評価を行い、その評価の高い牛肉の情報を見比べて、数値化して自社独自の基準として運用しています。

 通常のお肉屋さんですと、これを ”経験” と呼んでいると思います。経験は何物にも勝る宝ですが、その人の頭の中や体に染みついているだけでは誰もその情報にアクセスできず、活かす事は出来ません。またそのような状態を次の世代に伝えようとうと何年もかかり、生産的ではありません。

 このような情報を活かすにはデータベース化することが必要です。そしてそのデータベースは誰でもアクセス出来なければ意味がありません。ですから僕はこれらの情報をデータベース化しています。



 さて、少し話が逸れてしまいました。が、僕の品質を見極める極意は、データベース化するという事なのです。このデータベースを蓄積している時に、妙な特技を身につけました。それはお肉の断面を見ると、どのくらいの期間飼われていたか、という事を当てられるという特技です。ナンジャソリャ(';')

 飼われていた期間を業界では ”月齢” と呼んでいます。使い方としては、

「この牛は27か月齢やから色が浅いな、あまり美味しくなさそうだな。」や
「今の時代36か月齢まで飼える生産者はなかなかおらん。」

などと使います。一般の方は恐らく一生関わることの無い言葉かも知れませんが、この月齢は客観的評価に生きてくる基準となり得ます。

 では、今までのお話しを纏めて牛肉の客観的評価を行うには






血統が大事!
月齢が大事!






 という事になります。


 今度焼肉屋さんに行ったら是非



 「このお肉の血統は安福がらみかな?月齢は?」

と聞いてみて下さい。間違いなく


ウザッ・・・( ゚Д゚)
 

という反応を頂けます。もちろんこのブログで教わった事は内緒にしておいて下さい。





んんん?






最近は血統が評価されへんなんて書いてたやん!という鋭い方。食肉の味と血統の関係はまた別の記事でお伝えしたいと思います。結論から申し上げますと、関係あり なんです。























2019年9月10日火曜日

ミートマイスターを目指して

更なる高みへ。職人としての技術の頂点・集大成に挑みます♪




 ミートマイスターとは食肉流通における部分肉製造の最上級資格です。つまり、牛肉の脱骨、捌きにおいて右に出る物はいないくらい優れた技術の持ち主である、という事の証明になります。


 僕はお肉屋さんで働いています。いわゆる小売店です。昔はお肉屋さん、小売店でも牛肉の捌きを行っていましたが、現在では絶滅危惧種に認定されるのでは?と思うほど捌きを行うお肉屋さんが減ってきました。

 では今までお肉屋さんが行っていた仕事は、どこで行っているのかというと、捌きを専門とした会社に委託するか、大手メーカーさんが準備した捌き済みのお肉、いわゆる部分肉を購入する事で、捌き自体を行わないという流れが主流になっています。


 なぜ捌きを行うお肉屋さんが減ってきたのかと申しますと、捌きを行える職人の確保・育成が出来ない、枝肉で購入するにはノウハウが必要、場所も必要。更にはそもそものお肉屋さんの数自体が激減している現状があります。大手流通メーカー、スーパーさんにその地位を奪われています。

 大量仕入れ、大量流通の恩恵は価格に直結します。激しい価格競争に個人店のお肉屋さんは太刀打ち出来ず、消費者からの支持を失い、淘汰されてしまいました。僕の勤めているお肉屋さんは、そんな数少ないお肉屋さんの生き残り的な感じです。モットーは高品質かつリーズナブルな製品提供ですが、昨今の消費者欲求の多様化で、美味しくてお求めやすいだけでは支持されなくなってきました。


 なかなか複雑極まりない世の中になってきましたが、指をくわえて見ているだけでは衰退する一方。新しいチャレンジが常に必要になっています。僕はこのチャレンジに、自分の職人としての技術の集大成として、ミートマイスターに挑戦する事にしました。

 ミートマイスターと聞くと、何やらソーセージなどの加工品を思い浮かべる方もいらっしゃるのではないでしょうか。僕達の業界が定義しているミートマイスターとは、捌きに特化した資格です。つまり牛肉の脱骨作業の技術を評価して、ある一定以上の水準のものに対して、資格認定するというものです。


 主な受講挑戦者は、大手メーカーさんの基幹工場で働く幹部たちで、常日頃より技術を磨き上げている猛者たちです。大手メーカーさんの基幹工場は、海外輸出なども行っている最新鋭の工場が主で、高い衛生度と、複雑な要求に答えることの出来る素晴らしい施設です。


 そんな環境で働いている人たちが、合格率30%に満たない狭き門を競い合っているようで、小売店務めの僕の出番は無さそうな雰囲気ですが、



そんなこと知ったこっちゃありません!

やると決めたらやる。


 自分に実現出来そうにないくらいの目標の方が燃えてきます。お盆も済んで忙しさも一段落してきたので、数週間前より知り合いの捌き工場で鍛えてもらっています。試験は来年1月。あと半年足らずで仕上げなければいけません。おっと狩猟者登録もしなければいけないし、やる事だらけです。

うーん、人生面白くなってきた!!

死に物狂いで色々頑張ります!!


 この練習は、現在Goproで撮影中です。動画編集スキルを身につけたら、Youtubeにもアップしようと考えています。俯瞰視点の映像は復習にも予習にも非常に役立っています。実はこのGopro,最初は調子に乗って狩猟動画を撮影して、

公開→広告収入→ウハウハ

なーんて捕らぬ狸の皮算用的な事を妄想していました。それ用に買ったんですが、資格試験対策に使えるのでは?と思い試してみたところ非常に良かったので、以降ずっとそれ専用で使っています。そしてなにより技術の伝承に使えるという事で、なんと


会社経費

にしてもらう事が出来ました!!棚からぼたもち♪今年はついてます


2019年8月25日日曜日

あのジャンボイノシシ、現る(130kg越え)

ジャンボイノシシ恐るべし!!



デカすぎるのはいささかです。





 昨日8月24日、地元猟友会の方が、(ちなみに僕の師匠)有害駆除でジャンボなイノシシをゲット。ちょうど会社の仕入をするために、卸売市場に来ている時に、複数の会社社員からLINEが連発。何事かと見てみると・・・




  ↓
  ↓
  ↓
  ↓






うーん

何じゃ?これ?


で、でかい!!

軽トラの荷台横幅ぱんぱんやん・・・


 イノシシの屠畜は僕しか会社で行えないので、とりあえず待っていてと返信。荷台に積み込むのもこれは大変だっただろうなぁー

 後で聞くと、村の人3人に手伝ってもらって4人がかりで積み込んだらしい。僕の師匠は御年70歳。元気やなぁ。

 黒毛和牛の買い付けをするため市場に居た僕の携帯をチラ見して同業者さんも(+_+)びっくり!
なにそれ?と聞かれたので「イノシシ、・・・らしいです。」と答えました。夏場でもこんなデカくてまるまるしているなんて、本当に珍しいと思います。


 土曜日だったので、会社も忙しくなかなか屠畜できない状態だったので、師匠が「今日は儂がするわ!」と言ってくれたので一安心。あのでかさ一人でしてたらお肉屋さんの仕事出来ません。

 まるまるとした巨体は、脂ののった( ゚Д゚)状態。このように夏場で脂がのっている個体は、餌場が近くにあり、かつ移動距離の少ない外敵のいない環境でなければ育ちません。つまり畑のすぐそばの山に、人が入らない場所で何年間も過ごしてきた個体である、という事です。

 昼から僕も屠畜に参加。腹回り、背中の部分と3cm程度の脂がのっていました。



驚異の生体重量130kgオーバー



雄・推定年齢6歳




 専用の作業台の上で、少しずつ皮を剥いでいきます。皮を剥ぎながら、このイノシシがどうやって育ってきたかを師匠に教えてもらいました。

 以下師匠談



 「こんなイノシシは、この辺では珍しい。畑の野菜たっぷり食って、安全な場所に長い事おったんやろなぁ。それにしても盛りの時期の傷も少ないな。11月ごろに雌をめぐって雄同士激しくやりあうんや。牙で攻撃した時に、出来る傷が少ない。古傷はこんな感じで後が残るんや。特に発情期の雄は腹回りが傷だらけで、膿が出るから使いもんにならん場合が多いんやけど、このイノシシは去年ほとんどやられてないな。」



 飼育されている豚の事は、さまざまな牧場さんを見学させてもらっているのでそれなりに知識はありますが、イノシシは素人です。通ずる部分もあるかとは思いますが、個体からその生涯を推測する事は今の僕には出来ません。


 脂ののった個体だったので、皮はぎも超絶丁寧に行いました。一時間かけて剝いた巨体

はこちら。↓







このデカさ!!隣に比較で置いた黄色いライターが小人のように見えます。この写真に写っているのは長さの半分ほどです。ゴライアス!


 


 冷蔵庫に吊るした全部の状態でこの大きさ。図ると150㎝ありました。ながーい


 因みにこのイノシシはくくり罠でゲットした師匠。仕掛けた罠の見回る順番間違えてたらこいつ多分逃げてた、と言っていました。ワイヤー限界状態だったみたいです。


 僕の地元でもこんな立派なイノシシいるんだ、と思いました。今年が猟師初年度になる僕ですが、いつかこんな大物をゲットしたいと思った日でした。



 このままの状態で、1週間熟成させて捌きます。今から楽しみです。出来る限り丁寧な仕事を行い、美味しく頂く事が僕に出来ることかな、と思っています。


 



2019年8月24日土曜日

職人の技術

お肉屋さんの職人さんはどんな事をしているのか



お肉屋さん猟師の普段の仕事風景


 僕はお肉屋さんで勤めて17年になります。一応?一流職人のレベルには到達していると思います。(本当?)普段どんな仕事をしているかを今日はご紹介したいと思います。

 僕達お肉屋さんも時代の流れに合わせて仕事内容が変化しています。変化していないところは・・・数年たつと廃業です。どんな職業も変化しなければお客さんに評価し続けてもらう事は出来ません。

 昔は牛を屠畜するところからが、職人の仕事だったようです。牛を屠畜し、皮を剥ぎ内臓肉を処理して枝肉にする。枝肉をお店の冷蔵庫に吊るし、捌いて筋を引き、製品に仕上げて陳列するのが一連の職人さんの仕事でした。今はこのような仕事をしているお肉屋さんはほぼないと思います。

 お肉を販売している場所が小売店、いわゆる専門店しかなかった時代は、流通もその業態に合わせて発展・実施されていましたが、今はさまざまな場所でお肉が買える時代。流通も随分変わり、昔ながらのお肉屋さんは絶滅危惧種になっています。現在の流通の主たる場所は量販店、つまりスーパーです。

 スーパーさんの店舗は売り場8割、バックヤード2割の構成が一般的です。つまり店舗内で加工する事は比較的少なく、現地で出来る限り手間をかけずに販売スペースに商品を陳列出来るかが、鍵です。これは価格にも非常に大きな影響を及ぼします。僕の働いているお肉屋さんは、売り場3割、バックヤード7割の構成です。

 専門店を回り、買い物をする時代から欲しい商品を一同に得ることの出来るスーパーはその利便性から消費者の支持を得て発展してきました。さまざまな大手スーパーがしのぎを削りあっていますが、お肉部門はまだまだ発展する余地のある部門の様です。ちなみに海外の大手スーパーは日本独特の流通についていけず、どの会社もほぼ撤退していますが、コストコだけは生き残っていますね。

 昔はあのようなホールセールスタイルは流行らないと言われていました。ダイエーがその昔アメリカの流通スタイルをフューチャーして、コストコのような業態を開発したことがありましたが、すぐに廃業していました。時代にそぐわなかったのでしょう。そう考えるとダイエー創業者は時代の数歩先を行く慧眼の持ち主だったのだと改めて思う次第です。

 一時小売店は絶滅してしまうのではないかと思われるぐらい衰退していましたが、現在はスーパーさんもお肉の売上を落としているようです。人口減少時代、これからの消費は伸びる事はしばらく無さそうです。

 スーパーさんはその流通特性からお肉は ”部分肉” と呼ばれる状態で仕入れています。また部分肉を各個店が扱いやすいように改良した ”スペック” と呼ばれる状態で仕入れる場合も多いです。主な利点は商品化する時に扱いやすい事と、在庫調整のしやすさなどです。

 扱いやすい、といっても部分肉は大きいもので20kgを超えます。平均的な一人前80gの焼肉屋さんで換算すると、なんと250人前!牛肉を扱うのに技術が必要な理由の一つに膨大な量のお肉を製品化する、商品開発力が上げられると思います。牛肉は様々な筋肉が折り重なって部分肉を作っているので、硬いところもあれば柔らかいところもある、小さな面積な部位もあれば大きな面積の部位もあると、変化に富んでいます。

 その全てに適切な価値をつけて販売・管理する事はなかなかの技術です。良くわからずに行っている業者さんも多いと思いますが、この技術は僕達専門店、お肉屋さんの命綱でもあります。部分肉それぞれの品質を見極め、適した仕事を行って製品化する事で、そのお店しかないオリジナルな製品を作ることが出来るからです。

 僕の働いているお肉屋さんは、昔ながらの枝肉から部分肉を作る、 ”捌き” を行っているお店です。最近のお肉屋さんは行わなくなってきた作業ですが、覚えるのにも時間が必要ですし、捌く人材を確保するにはそれ相応の人件費が必要になってきます。適切な利益を出せる会社でかつ、人材確保と人材育成の出来る会社でなければ実現できなくなってきました。

 捌きはお肉の専門店で必要とされる技術を習得するには何年もかかります。この大変さが捌きをしなくなってきた要因の一つであると思います。この捌きは現在は主に大手食肉メーカーさんが大型工場で行っています。皆さんも良く聞く 日本ハム や 伊藤ハム 
などのメーカーさんが行っています。

 その大手メーカーさんが作った部分肉が現在の流通の主流です。この主流に逆らうがごとく枝肉を扱っているのは、守るべき価値と、その守るべきものから新たな価値を生み出すためです。競合他社との競争に勝ち抜き、お客さんに指示されるためには、競合が行わない取り組みを行う事が良い方法の一つだと思っています。

枝肉とは


 下の写真は今日、僕が競りで買った黒毛和牛です。これは枝肉の右側。脊柱で半分に切り、左右合わせて一頭分の枝肉になります。アキレス腱の所に丈夫な金属製のフック(業界ではちんちょうと呼んでいます)をかけて逆さまにぶら下げています。
 






 下の写真は枝肉の評価をするために胸骨第6本目で切開した面です。この切断面を見ながら評価したりします。焼肉屋さんで見かける ”A5等級” なんていう評価もこの切断面を見ながら、日本格付協会(通称日格)という公的機関が、見本を見ながら決めています。











 が、どうしても見本を頼りに、格付けする人間の主観的な評価になってしまうので評価のばらつきがあったりします。評価する人間の好みなども反映されていたりするので、この格付けは参考程度に、枝肉を選別・購入する担当者独自の評価をすることが多いと思います。少なくともこの格付けは味などの評価は入っていないので、(もちろん事前に食べれません!)経験を頼りに、自社の求める価値のある枝肉を買い付けていきます。


 写真では解りにくいですが、この黒毛和牛の格付けはB-3です。A・B・Cというのは歩留まりを表しています。Aが73%以上、Bが70%以上、Cがそれ以下です。この歩留まりの評価方法は、主に先ほどの切断面の筋肉が占める割合から導き出されます。僕の買った黒毛和牛はBの評価なので、こうしてみるとあまり良い品質では無いのでは?と思うかもしれませんが、この歩留まり率は味などにはほぼ影響しない項目です。

 歩留まり率とは、枝肉から骨、大まかな脂を取り除いた時の、最初の重量からの減少率の事です。勿論歩留まりが良ければ産肉量が増え、それはそれで良いお肉の条件とも言えますが、僕の働いている会社では利益も重視していますが、一番は食べて頂いて美味しい事、これを第1条件にしています。ですから歩留まり率は僕達の評価では2番目以降の条件です。

 この歩留まり率は作業従事者の技術でもかなり変動します。僕達が枝肉から骨を取り除く作業、捌きを行うと大手メーカーさんと2~3%変わります。それは良い方にです。黒毛和牛一頭を100万円だと仮定すると、歩留まり率は1%で1万円の利益率の変動を伴う事になります。

 この一万円分が僕達の技術で算出している利益です。ただこの計算は効率は考慮していないので、時間が沢山かかるとその分人件費も掛かるわけですから、大手メーカーさんはそのぶん効率を最大限上げて商品原価を抑える工夫をされています。大量に仕入れて、大量に販売する訳ですから、効率は非常に大事です。

 その反面、僕達の様な専門店は大量に仕入れる事はありませんので、技術で丁寧な仕事を行い、その技術で利益を算出するスタイルです。ちなみに今日は黒毛和牛を2頭買い付けました。専門店で一日2頭買い付けするのはけっこう勇気が要ります。牛1頭から何百人前ものお肉が産出されるので、販売力が無いと出来ないです。

 産出したお肉は一日で全て売れるわけでは無いので、管理・保管する技術が必要です。同時に熟成も管理しなければいけません。全て同じ精肉製品になることもありません。ヘレ肉やサーロインといった高級部位はステーキ用に、カタロースはすき焼き用に、などそれぞれの部分肉に適したカットを施して商品化します。


 自分の行っている仕事をふと振り返って書いてみると、色んな取り組みがあるんだなと自分でも改めて認識した次第です。お肉屋さんの仕入れ担当はこんなことを行っています。

 今日は僕の日常業務のお話しでした。お肉の事で気になることがあれば、僕のわかる範囲でお応えします!


 P・s


 今日、ジャンボイノシシが現れました。このジャンボイノシシや如何に?



 次回にご紹介したいと思います。

















2019年8月15日木曜日

初めてのコメント頂きました!!

嬉しすぎて記事にしてしまう単純さ 草


初めてコメント頂きました!!!

 あまりもの嬉しさに記事にしてしまう単純な私。乙

 残念ながらせっかくコメント頂いているのですが、お相手の方のアカウントが解らず返信できませんでした。よって調子に乗って記事を一本書いてしまおうと思った次第です。


 こちらが頂いたコメント♪ ↓↓↓

 
お店にか商品として出るまでには
やっぱり大変な作業があるんですね。
熟成肉食べたくなりました。
 ありがとうございます<(_ _)>

 そうなんです、作業と工夫の連続です。でもどんな業界でもいろいろな工夫を経て商品化されていると思いますので、僕達の食肉業界に限った話ではないと思うのですが、やはり ”餅は餅屋” と申しますか。食品の中でも牛肉はとりわけその全てを知るには難しい食品だと思います。

 僕は今のお肉屋さんに勤める前はビストロに勤めていました。パンを焼いたりパスタの手打ち、コース料理を出している支店もあったので、デザートも店内で仕込んでいました。つまりかなりの幅のある食品を取り扱ってきた訳ですが、一番牛肉が勉強しにくかったと思います。

 これは多分焼肉屋さんでも同じことが言えると思います。牛肉は骨付きの状態で平均450kg。大きな部位に平均32個に分かれます。その全てを消費期限内に通常の飲食店で取り扱う事は至難の業。また骨を抜く脱骨という作業(業界では捌きと言います)や硬い筋や余分な脂を取り除く作業(これは筋引きと言います)が必要です。

 この売る力や商品化する技術や体制、牛肉を精肉化する技術は一朝一夕では身につける事は出来ません。また牛肉を仕入れる際に大きな骨付き肉で見極めて仕入れることは、仕入れ業務の中でも一番経験を必要とされる仕事です。この大きな骨付き肉を ”枝肉” と業界では呼んでいます。

 枝肉は卸売市場で主に仕入れます。というか枝肉を生産するには屠畜しなければいけません。家畜を屠畜する事は ”屠畜場法” という法律で厳しく管理されており、このことで消費者に安心で安全な食肉を届けることが実現できます。兵庫県内にある屠畜場は全部で7か所、その内屠畜後の枝肉を活発に卸売市場で ”競り” を行い取り扱っているのは姫路の和牛マスターという屠畜場と神戸の西部市場の2か所です。加古川は週2回、その他は競り自体を行っていない屠場です。

 (※その他の屠場で屠畜される家畜は、相対取引という取引形態でその市場に出入りしている業者さん達だけの間で流通しています。)

 競りは単純に申し上げますと、自分が欲しいと思った牛肉に一番高値を付けると手に入るシステムです。が、なんでも高値で買い上げると当然利益は出ませんし、牛肉に対する価値観はその仕入れる方の価値観に左右されます。つまり好みが出てくるわけです。また誰が見ても価値のある牛肉は当然高い値段がつきますので、如何にして自分の欲しい品質を出来る限り低価格で仕入れるかが勝負の基本です。

 ところが仕入れに来ているのは当然自分一人ではありませんので、自分が欲しいと思っている牛肉は誰かも求めています。そうすると必然的に価格は上がって行きます。これが競りのシステムです。テレビなどでよくやっている競りは漁協さんや果物・野菜の手競りですが、(手で自分の意思を表して、購買の意思を示す競りのシステム)現在ではそういった手で競ることはほとんどありません。機械装置によって意思表示します。

 あまりにも安く買おうと競らないでいると何も手に入りません。今日も手ぶらで帰ったのかと他の業者さん達に見られてしまうので、そこそこ競る、たまに無茶するぐらいじゃないと買えないのです。このやり取りが何時になってもドキドキします。僕はサラリーマンですから、会社の資金を使って競ります。当然赤字覚悟で競る場合もありますが、そうすると怒られます、社長に。

 競りに参加するには舐められない事も大事、意地を張りすぎて赤字全開で競り落とすと社長に全開で怒られる、こういった事をしのぎつつ今日も牛肉を仕入れています。まあ僕のスタンスは出来る限り敵を作らない、というスタンスです。仕入れに来ている業者さん達はほとんどが百戦錬磨のツワモノぞろい。ライバル同士で激しく火花を散らしていますが、僕のように一般消費者向けに販売している小売店では購買力が違うので、こういった業者さん達とはやり合いすぎないように注意しています。

 当然業者さん達とはその他の取引でお世話になる場合もあるので、そこのところは良いバランスで付き合わなければいけないのです、いわゆる業界のしがらみってやつですかね~ それに仕入れに来ている業者さん達は主に社長連中や経営中枢の方々ばかり。僕のような中間管理職は少ないです。決済できる力が違うので、太刀打ち出来ない、というか太刀打ちしません!!www

 さて苦労(?)して仕入れた枝肉を今度は熟成させていきます。枝肉の状態で熟成させることは、様々なメリット・デメリットがあります。これらを自分たちの考えている状態に導きながら調整して熟成させます。枝肉を取り扱うお肉屋さんは本当に少なくなってきました。お肉屋さん自体が減少し続けている訳ですから当然ですが、骨を取り除く作業、通称捌きの出来る職人さんはもう本当にレアな人になってきています。

 枝肉熟成は求めている状態まで熟成させて捌きます。僕の勤めているお肉屋さんではだいたい2週間熟成させます。骨付きの状態で酸素残存化の大気中で熟成させると、牛肉は独特の芳香を放つようになります。熟成香と呼ばれている香りです。好気的条件(空気中という意味)により活動する微生物が活動して出来たり、筋肉中や脂肪中の成分が化学的反応(これは逆に嫌気的反応、つまり酸素無し状態も含む)により醸成される成分です。

 良い品質の枝肉を収めている冷蔵庫に入ると、美味しそうな食欲をそそる香りがします。よそのお肉屋さんに行く時、枝庫という枝肉を吊り下げている冷蔵庫に入ると、そのお店がどういった品質の牛肉を取り扱い、販売しているのかがひと嗅ぎでわかるという(一目やないんかーい)職業病みたいなものですねー、もちろん陳列されている牛肉でも解りますが、鼻の方がなんだかプロっぽく感じるので、鼻押しで行きます。w

 熟成と一口に申しましても、様々な業界内での定義があり僕が見学したお肉屋さんで最短3日で熟成肉として販売しているお肉屋さんを見た事があります。法律で熟成について定義していないので、3日から最長で3か月までのお肉を熟成肉として取り扱っているお肉屋さんがあります。そろそろ法律化の声が聞こえてきている業界内ですが、まだ有識者内での検討に留まっている模様です。

 この熟成を法律で定義しよう、という動きはどちらかと言うと事故防止の観点からの動きです。事故とは熟成肉の扱いを間違えて、食中毒事件を起こるのを防ぐ国の動き、という事です。前回の記事でも紹介しましたが、熟成肉の取り扱いがあまりにも未熟な飲食店さんが多い(僕の主観的意見ですが、国もどうやら同じ意見のようです)ので、いっそのこと法律で定義してしまおう、という事のようです。

 この定義がどうやら上限・下限の定義の様で、熟成肉と表示するには何日以上・何日までに販売、となりそうな雰囲気。でも僕達小売店では厳しく取り締まれそうですが、星の数ほどある牛肉を取り扱う飲食店に果たしてこの法律を浸透させて、実行力のある物にできるかという一抹の不安はあります。小売店で厳しく取り締まれる、と言ったのはトレーサビリティ法のおかげであります。

 牛肉は生まれる前から消費者に届くまでその全ての追跡が可能な数少ない食品です。豚肉や鶏肉はこの法律の範疇外、魚は水揚げした港が生産地になるので、卵の時にどこでどうしていたかなんて追跡できるはずもありません。個体識別番号という10桁の番号により、どこで、だれが何をどうしたのかが生産から消費まで公開されています。

 お肉屋さんではこの個体識別番号を販売する牛肉に、消費者に分かりやすい形で表示する義務があり、これが厳しく取り締まれるよ、という根拠です。飲食店さんは推奨なので、表示義務が無く仮に熟成が法律で定義されても一番危険な販売先を取り締まり管理することが出来ないのではないか、という事です。

 まあ熟成もブームですし、卓越した技術と管理で正しい熟成肉を販売されている飲食店さんもありますので、最終的には消費者に支持されない飲食店は淘汰されていくという、資本主義の体現により進むべき道に向かうのでしょう。

 消費期限と言えば枝肉には実はありません。(!!!)これも法律で定義される、なんてことになるともしかしたら今までの熟成肉が食べれない!何てことが起きるかもしれません。枝肉を部分肉という(サーロイン、とか)ものに切り分ける時に、消味期限が添付されます。この根拠は細菌数により決められている場合が殆どです。まず一般生菌数検査という細菌の数を日数の経過と共に観察し、厚生労働省が定めている数値内に留まっている期間を算出します。

 この産出された数字に、流通時のダメージなどを考慮して安全係数というもの掛けて算出するのが牛肉の部分肉に添付されている賞味期限の根拠になります。だいたい40日が主な表示です。また部分肉に加工する工場の衛生度によって数字は多少上下するので、輸出対応の工場なんかだともっと長い賞味期限がつきます。

 こうやって部分肉になったお肉が現在の流通のほとんどです。スーパーなどで販売されている牛肉は部分肉を仕入れて、加工しているのです。この部分肉の賞味期限はその販売しているお店の冷蔵庫の性能や、加工場の衛生度によってこの日数で大丈夫かと言えば一概には言えません。

 牛肉は消費者の方が選ぶときに、日本人の方は特にですが鮮度を指標にしていると思います。刺身・生食の文化がある国ですので当然ですし、すき焼き用や焼肉用など精肉になっている牛肉は鮮度で選ぶことはほとんど間違いありません。

(※一部例外あり、というか実はお肉の熟成は様々なプロセスがあり、カットの方法やそれまでの経緯などによってその牛肉が一番食した時に美味しくなる状態は、厳密にいうと鮮度だけを頼りにしているのは間違いです、がそんな事を気にしていたら食事も喉を通らなくなるので今回は説明は割愛。)

 
 鮮度が消費者に対して良く見える期間内に販売しなければ、割引・からの半額何てことになると赤字まっしぐらですので、スーパーさんなどで販売している牛肉は鮮度抜群!熟成にはほど遠い存在。くしくも激安スーパーなどは鮮度の落ちた牛肉を安く仕入れるので、ある意味熟成している牛肉を販売していると言えるかもしれません。

 熟成


 熟成についてお返事を書こうと思ったら、前置きがこんなにも長くなってしまった( ^ω^)・・・

 それでは深淵なる熟成の世界にレッツゴー


 プロが行う正しい熟成は、


 先にゴールをある程度決めている
 

 状態だと思います。牛肉の品質を最初に見極めて「この牛肉だったら、この部位だったらこの熟成をして、この辺りの日にちが一番おいしい時。」というのをわからなければ出来ない技術です。その熟成を可能な限りコントロールして、経済的に成り立つ範囲で熟成しなければ僕達お肉屋さんはやっていけないのです。究極の熟成もたまにやってみたりしますが、多くの消費者の方に指示され、かつ会社にも利益の出せる範囲でなければ行う事は出来ません。


 一部超高級店さんなんかでは究極の熟成を行ったりされていますが、これは法外な価格になります。枝肉の熟成には様々なメリット・デメリットがあると申し上げましたが、最大のメリットは美味しさの醸成(もちろん熟成の限度はありますが)、デメリットは価格の上昇、廃棄部分の多さにあります。

 枝肉から骨を取り除くときに平均して重量は74%程度になります。骨付きで1000円で購入した牛肉は、骨を取り除くだけで約1350円に。あとは大気中に水分が蒸発して目減りするのが1週間でおおよそ1%。水分量が少なくなるほどにこの数値は下がりますが、仮に2か月間8週間枝肉で熟成させると66%に。これで1515円。枝肉の表面は酸化して更にうっすらとカビが生えてきます。食べれないので取り除きますが、これで更に60%に。1666円。この枝肉からとれた部分肉の硬い筋や余分な脂を取り除く筋引きを丁寧に行うと更に3割減。

 

・骨付き1000円kg辺り100kg☚
 原価金額=100000円
・部分肉にするだけで2083円kg辺り


おお、倍の金額がついてしまいました。これを更に余分なドリップなど省く管理する作業などを行って精肉にします。さらに熟成肉は温度変化に敏感に反応しますので、非常に高性能な冷蔵庫が必要になるなど、通常のお肉屋さんと比べて設備投資をかなり行わなければいけません。それにこれは全ての部分肉の平均単価で、高級部位も低級部位も同じ評価金額としています。サーロインやヘレの様な高級部位は価格差が3倍以上します。

 お肉、黒毛和牛がkg辺り1000円で仕入れることは不可能です。良い品質の牛肉は最低でもkg2000円以上しますので、そういった事を考えていくと、サーロインなら原価が最低でもkg辺り

((2083円×2(1000円の倍)の更に3倍+設備投資・人件費・利益など必要経費経費を20%と仮定))因みに20%だったら超がんばっているお肉屋さんです!!


15600円以上となりました。改めて計算すると高いな・・・いや、それだけかかるのは必然なのです。このお肉をステーキ屋さんで200g注文すると原価で3100円かかってくるという事になります。飲食店の原価率は30%が平均といわれているのでステーキ200g一枚1万円という風に導き出す事が出来ます。

 これが世の中で正しい熟成肉の価格となります。お家で調理すると一枚1万円もしませんが、火入れや提供の仕方など再現できない事も沢山あるので、本当の熟成肉をステーキで味わうと仮定すると、一万円で食べれたらかなり安いってことになります。熟成肉恐るべし・・・

 因みに飲食店の原価率30%は本当の平均値です。今話題のいきなり!ステーキさんなどは60%という驚異的な、業界の常識を破壊した原価率です。俺の○○、なんていうお店もそういったビジネスモデルでなりたっています。ですから常に満席でないと成り立たない商売なんですねー、いきなりステーキは今苦戦しているそうですが、自店の淘汰が進めば業績は回復するのでしょうか?

 話が脱線したので再び熟成の話に軌道修正、というか脱線しまくりながら業界の事を色々書いている方が、書いている僕自身は楽しかったりするのですが。さてこのように高額な熟成肉ばかりでは当然ながら消費して下さる方も少数になりますので、もっと親しみやすく熟成肉を提供できないか、と僕達は取り組んでいます。具体的には枝肉の熟成と、部分肉での熟成を組み合わせたいわばハイブリッドな熟成です。

 この熟成法は、両者の良い点を取り入れた経済的にもよい方法だと思っています。美味しさを追求しつつ、管理しやすくお手頃な価格で販売できる方法なので、この方法を軸として様々な工夫を行いながらお肉を取り扱っています。


 お返事を書こうと思ったら、僕のブログの中で最長の長さになってしまった・・・

 熟成やお肉の事はまだまだ、いやほんとうにまだまだまだまだ書けますが、タイピングのおぼつかない僕にはそろそろ限界です。

 コメント本当に有難うございました!!