2019年7月29日月曜日

狩猟にナイフは必須です

モーラナイフ ガーバーグ マルチマウント ステンレス


使えるの?モーラナイフ



 狩猟にナイフは必須の道具。僕はお肉屋さんで勤めていますし、普段から刃物を取り扱っているので、刃物にはちょっとうるさいかもしれません。

 モーラナイフって価格も手ごろで評判も上々。でも本当に使えるの?刃物のプロがしっかり品定めしたいと思います。

 勿論ナイフが活躍する場面は何も狩猟だけに限らず、アウトドアには必須の道具。そして何よりかっこいいナイフをカッコよく使うって何だか憧れませんか?


 まずは刃物にうるさいお肉屋さんの包丁を紹介。

 仕事で使う包丁は全部で6種類。脱骨用の捌き包丁が2種類、筋引き用の包丁が3種類、大きな塊を切り分ける平切包丁が1種類の計6種類。これに骨を切るチェーンソーも使うので刃物は7種類ということになります。
 
 (8月2日追記・・・皮はぎも使っているのをすっかり忘れていました(笑))

 各包丁のスペックや用途は以下の通り。

  1. 捌き包丁・・・脱骨という骨付きの塊から骨を取る作業に用いる包丁。牛肉用に2種類。➀ブレードの厚みが2.5mm、全長 230mm 刃渡り 105mm➁ブレードの厚みが2.5mm、全長 265mm 刃渡り 135mm  (どれも中古、つまり研いでいるので短いです。ハンドルはHACCP対応樹脂製)なぜ2種類いるのかと言うと、部分肉に切り分ける際にかなり深いところを切る作業があるため。この作業は業界ではヘレ下げ、と呼ばれていて名前の通り、高級部位のヘレを扱う作業なので細かい作業に対応するために短い包丁を用いるのです、後は意外と力のいる場面でもあるので短いことが必要です。
  2. 筋引き包丁・・・牛肉の塊から固い筋を取り除くのに用いる包丁。3種類あるのは適した場面でより良い結果を出すため。➀ブレードの厚みが2.2mm、全長 340mm 刃渡り 220mm(樹脂グリップ)➁ブレードの厚みが2.2mm、全長 380mm 刃渡り 280mm(木製グリップ)➂ブレードの厚みが2.2mm、全長  420mm 刃渡り 300mm(一番最後の➂は新品♪いわゆる10寸で木製グリップ) 美しい作業を行った筋は牛肉の赤身がついていおらず、銀色に輝きます。おでんに必須のスジはこうやって生まれるのです。
  3. 平切包丁・・・部分肉にするために大分割を行ったりする大型の包丁。ブレードの厚みが2.2mm、全長 420mm 刃渡り 300mm  作業効率アップと美しい切断面を作るための包丁。ステーキのカットする際などにも欠かせない包丁です。樹脂グリップ。
  4. 皮はぎ包丁・・・ブレードの厚みが2.5mm、全長 280mm 刃渡り 170mm 古代中国の武具、青龍偃月刀のような外側に円弧した包丁。手首を返しながら皮をはいでいく作業専用の包丁です。因みに僕は錆びにくいステンレス刃のものを使用中。樹脂グリップ。

 
 お肉のプロが扱う包丁の種類はざっとこんな感じです。ちなみに職人さんそれぞれで刃先の形状を変えたり、そもそも基本の形状が違ったりなど意外と包丁も色んな種類があります。僕は食肉業界で関西と呼ばれている形のものを使っています。

 因みに全て片刃、素材はお肉専用の日本鋼です。(皮はぎを除く。)

 グリップの違いは作業工程により使い分けています。








 そんなお肉のプロの僕が選ぶ狩猟用ナイフは・・・

 実はカッコ良さから入りました(!)

 いやー、憧れだったんですよね。何にするか悩みに悩んでいたのですが、もう思い切ってカッコよさから入ろうと思った次第です。それにもし狩猟に使えなくても家で包丁の代わりになるとかの情報を得ていたので、これはもう見た目から選ぼうと思ったのです。結果見た目かい!とつっこまれそうですが、そこは刃物のプロですからご安心を。

 



 

 ここでWikipediaより抜粋

 以下↓
 
モーラ・ナイフはスカンディナヴィア地域で長年にわたり日常で使用されているナイフであり、その単純で丈夫な構造、手入れのし易さと用途の広さ、その上に比較的に価格が安いといった点でアウトドア愛好家の間で特に好まれている。モーラ・ナイフは高名なアウトドアのインストラクターであるレイ・マース(Ray Mears)とモース・コチャンスキ(Mors Kochanski)からも高く推奨されている。さらにスウェーデンとフィンランドを中心とした北欧では、モーラ・ナイフは建築現場や工場での汎用道具として幅広く使用されている。ほとんどのモーラ・ナイフのデザインはフィンランドの伝統的な汎用ナイフであるプッコpuukko)に似ている。
鍛造品のモーラ・ナイフは中世を製造する鍛冶屋の伝統まで遡る。伝統的なモーラの刃は軟鋼で高炭素鋼を挟んで鍛造して造られていた。刃先は伝統的に高品質で非常に高い強靭さを持つるつぼ鋼製で、刃の両側面は柔らかいがより粘りのある鋼で出来ている。この柔らかいが強靭な鋼で、脆いが硬い鋼を挟んだ構造は日本刀の構造に似ているが、違いはモーラ・ナイフは日本刀のような積層構造ではない点である。これによりモーラ・ナイフは、簡単には欠けない、刃のくいつきの良い、錬鉄や軟鉄さえ切れる素晴らしい道具になっている。近年の大半のモーラ・ナイフは工場の生産ラインでロール鋼板から打ち抜き出されてから熱処理が施されている。ラミネート(積層)の刃のナイフはClassic Original 1のみとなっている



 



 ふむふむなるほど、伝統的に優れた鍛冶製品を作る地域なんですね、スカンジナビア半島って。少し話は脱線しますが、軍需産業なども盛んで、これは国境を隣する旧ソ連に対抗するために自国の防衛力を高めなければならかった事情からでしょう。けして人口は多くないスウェーデンが世界的にも有名なサーブ(戦闘機メーカー、グリペンなど有名)やボルボなどの確固たる工業製品を世に送り出している背景にもこういった中世から続く鍛冶術は恐らく関わっている事でしょう。


 それに旧ソ連と申しましたが、現在のロシアは十分驚異を感じる相手である事は疑いの余地は無いと考えます。クリミアの併合や周辺諸国への圧力などの軍拡路線と言いますか、新しいロシアは帝政ロシア時代を彷彿とさせる気がしないでもありません。ちなみにプーチン大統領の人気は絶大でファーストネームの ”ウラジミール” は現在同国No1の人気なんだとか。改名も比較的行いやすいようです。


 さて製品のインプレッションと申しますと大げさですが、毎日刃物を取り扱い、こだわりをもって選んでいる男の話は是非襟を正して聞くべきです、普段から間抜けな投稿の多いこのブログを少しでも読んで下さっている方には 急になんだよ と憤慨される方もいらっしゃるかもしれませんが、紛れもなくお肉のプロである事は確かなので今日の投稿はやたらと前置きが長いのです。


 ようはちょっと変な狩猟のオジサンがナイフを語っていると思われたくない、ちゃんと刃物の扱いについて知っているぞ、という権威付けを行いたかったのです。不慣れな国際情勢を語ったり、Wikipediaから引用したりとあの手この手で今日はやり抜きます、はい。


 と言えどお高い駐車料金にびびったり綺麗な女性に鼻の下を伸ばしきるなどの醜態を重ねていますから、まあそんなに気取らずにあくびでもしながら読んで下さい。

 

結論は


強いぞ!フルタングナイフ

ってことで何が強いのかと言うと、それは胸骨を切断できる強さから。胸の所(心臓の下辺り)には骨があるのですが、イノシシなどの野生動物は家畜と比べて格段に骨が固く、また関節が固いです。野生動物なので正確な月齢は解りませんが、地域個体の相対的重量や毛色、生殖器官などの発達具合からおおよその月齢は判別できます。


 豚と比べて感覚的には倍ぐらいの強度があると思います。ウリボウでも僕が使っている捌き包丁で簡単には胸骨を断ち切れない時があります。ウリボウを3か月齢と想定すると、豚の平均出荷月齢は5か月齢、豚ならば切れますが、ウリボウは切れない時があるのです。このようなかたーい胸骨を

モーラナイフ・ガーバーグはすぱっと切ることが出来ます。

 僕の使っている捌き包丁でも切れない事はないのですが、胸骨の下には心臓や肺、更には胃などが入っており、また内臓を出来るだけ傷つけないように解体しなければいけないので、不用意な一撃はイノシシ肉の汚染につながる恐れがあるので無理はしないようにしています。

 また捌き包丁は片刃なので力いっぱいに扱うと刃の角度分だけ切りたい位置からずれることも想定できます。その点、ガーバーグは両刃なのでその心配はいりません。ただし刃渡りが長いので立てて使用すると臓器を刺す事間違いなしです。

 因みに80kg以上の個体はおとなしく骨切用のこぎりを使うようにしています。さすがに硬すぎるので。不用意に傷つけて汚染とか嫌ですしね。そう考えるとお腹を開くにはガットフックを使うのも一つの手ですが、これは自分で研ぐことが多分無理なので僕は直刃を使うようにしています。

 皮をはぐには少し長めの刃渡りで慣れが必要ですが、出来ない事はありません。アウトドアでは一つの道具で出来る限りのことを実現させなければいけませんから、強さがあるという事は重要な要素だと思います。小さい鳥などはその強さ、剛性は活かせないかもしれませんが、モモ肉をぶつ切りにするなどは問題ないでしょう。

 モーラナイフ・ガーバーグはモーラの最強シリーズで、その構造はフルタングナイフであります。フルタングとはブレードからハンドルまでを同じ鋼材から作られている構造で、イメージ的には貫通ドライバーのような感じです。柄の底から出ている金属部分がブレードまで繋がっている同一の、一枚の鋼材から成型しているので強さがあるのです。

 安価なナイフはブレードからほんの数センチだけしか柄に刺さっておらず、こういったナイフでハードな扱いをすると柄がもげる、曲がる、ひしゃがるといった悲しい事が起きてしまいます。因みにお肉屋さんの包丁はフルタングではありません。これは様々な道具を準備出来る環境にあるので必要が無いからです。

 このように狩猟で使える事間違い無しなモーラナイフ・ガーバーグ。


 価格はなかなかなお値段がしますが、カスタムナイフなどから比べると断然安いです。これ一本で野外・アウトドアでしたいことがほとんど出来そうです。骨を切れるわけですからある程度の太さならば木なども問題無し。バドニングや薪割にも大活躍しそうですね。


 狩猟にしっかりと使える事は判明しましたが、使ったら刃物は手入れしなければなりません。今回僕は敢えてステンレスを購入しました。普段は日本鋼、カーボン鋼を使っているのですが、お手入れの簡単さからステンレスをチョイス。しっかりお手入れしたいタイプの方や、より鋭い切れ味をお求めの方はカーボンを選んでください。


 普段カーボンをお使いの方や、あまり刃物を研いだ経験のない方はステンレスは研ぎにくく感じるかもしれませんが、カーボンより刃が目減りする事もないのでしっかり練習する事と、砥石を選んで研ぐと良いかもしれません。


 ステンレスは研ぎ味に特徴があってカーボン鋼と比べて粘りが少なく固いので、砥石のチョイスはかなり効果があります。僕は同じ砥石を使っていますが変えてみるのはありでしょう。僕が普段使っているのは人口砥石の1000番で中研ぎ、2500番で仕上げです。

 番数を選ぶことも重要ですが、刃の当りが柔らかく感じる物の方がステンレスは研ぎやすいと思います。具体的にはセメント系の砥石を選ぶと良いでしょう。これは刃の当りが非常に柔らかく、少しだけですが天然砥石に似た研ぎ味があります。僕がこうやって説明するにも理由があって、中学校の職業体験学習で刃物の研ぎ方を教える機会があるのですが、総じてステンレス刃をうまく研いでもらうにはこの組み合わせが良かったのです。

 研ぎ方をレクチャーした後にその砥石を生徒さんにプレゼントするのですが、のちにお客さんでお母さんなどがいらっしゃった際に、 「あの砥石良かったよ。」 と良いお話しをお伺いする事が出来ているのである程度は正しい選択だと思っています。



 この記事で敢えてステンレスのガーバーグをお伝えしているのもこういった背景があるのです。強さのあるガーバーグはハードな使用に十分応えてくれる性能です。最初は見た目で選んだなんて言っていましたが、きちんとした理由もあります。僕は初めてのフルタングナイフはステンレス製のモーラナイフ・ガーバーグをお勧めします。




 さて、強さやお手入れのしやすさなどは十分ですが肝心の使い心地、グリップはどうでしょうか?モーラナイフ・ガーバーグは樹脂製のハンドルで表面に細かいチェッカリングが施されています。(網目模様みたいなやつ)グリップはおよそ12cm。大き目な手の僕でも十分な握り心地。勿論もう少し小さい手の方でも問題なく握れるような形状になっていて、握り心地はなかなかの感触です。


 樹脂製、ポリアミドという材質でこれは包丁のハンドルにも用いられたりしているので僕は慣れ親しんだ感触です。硬すぎず、吸い付くとまでは言いませんが本当によい握り心地を提供してくれます。因みに普段イノシシの解体をするときにはニトリル製グローブ(手術の時に使うような青い手袋、白色もあります)をはめて使っていますが、これも問題無し。素手でも、ゴム系の手袋をしていてもその総力が失われることはありません。


 本当にいいことずくめな感じのガーバーグは買って良かったな!と思っています。
 




 欠点がなかなか見つからないガーバーグですがここは刃物のプロとして敢えて探してみましょう。まずは価格の高さが上げられると思います。モーラナイフといえばコストパフォーマンスに非常に優れたナイフとして有名ですが、このガーバーグは1本でコンパニオンだったら4本買えちゃいます。これは手痛い・・・グヌヌ


 しかし大は小を兼ねると申しますか、出来る事のレベルが違います。持っているだけで
こいつ、出来るなって思われます。またマルチマウントは携帯性が非常に高く、体のいろいろな場所にセットして持ち運ぶことが出来ます。このマルチマウントは単体での購入も出来るようですね。




 これは嬉しい。まずは本体だけ買ってみて、不便を感じたら買い足していく事も出来ます。僕はスリングバックのモールに取り付けて携帯しています。


















 このモールでマウントする方法は取扱説明書が無いので自分でインターネットで検索して調べると、様々な動画がアップされているので直ぐに知ることが出来ます。その他の欠点・・・あった!

 それは刃渡りが短く感じる時がある、という事です。ガーバーグは刃渡り約11センチ、実はこの長さだととどめ差しする時などに短く感じていました。これは物理的にどうしようもないので、別のナイフを購入する事に。出来る限り1本で済ませたかったのですが、バックアップの意味も含めて購入。銘柄は同じモーラの748Gをチョイス。この748はまた別の機会にご紹介したいと思います。

 本当に優秀なモーラナイフ・ガーバーグですが、刃物の宿命、血のりや脂が付くと当然ですが切れ味は悪くなります。シャープナーの携帯も必須と言えるでしょう。



 僕は☝このタイプを使っています。ボールペン程度の大きさ・重さなので携帯には困りませんし、機能も十分、使える相棒です。



 このタイプもありました。☝
 

 
 まとめると


 使えるの?モーラナイフ・ガーバーグ



 はい!問題なく!




 後は実際の仕事にも使ってみようなんて考えたりしています。その様子もまたお知らせできればと考えています。









 刃物は見た目♪押忍↓↓↓










 







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